第二十六章 俊足ベスパ計画 その2 クランクケース分割・ギア分解



 

さぁいよいよ未知の領域、クランクケース分割です。

まずはケースを見回し、外すべきボルトを確認します。(ベスパ整備本と、宇賀神商会の分解画像を何度も見てイメージトレーニング済み)そこで気が付いたのですが、ケースを固定しているボルトはケースを貫通しているボルトがほとんどで、そのボルトの頭は、ケースに引っかかって周り止めの役割をするようになっています。

しかし、その周り止めの頭が、ケースの片側だけにあるわけではなく、場所によって表にあったり、裏にあったり少々複雑です。ケースを閉じる時にパニックにならず締められるように、あるものを作りました。その名は・・・

   

ボルト・ナット位置&表裏記憶装置

説明しよう!(タイムボカン風)

これは、ケースから取り外したボルトの位置、
表裏がひと目でわかる画期的装置なのだ!

材料はハニカム構造を駆使して作られた
軽くて丈夫な素材「ダ・ンボール」!

これに絵を描き穴を開け、ボルトを挿すだけで
超簡単にできる優れものなのだ!

アホらしいですが、これほんとに便利でした。今思えば、ダンボールの裏側使えばきれいだったんですけど、その時の思いつきで書いたんで・・・見えづらくてすみません。

尚、写真の中の白い丸はケースを貫通した雄雌のあるボルト・ナット。黄色い丸はナットのみです。これを全て外せばケースが割れる状態になります。取り外した順番はフライホイルのサークル内にある5本から緩め、その後周りを均等に緩めていきました。

ただし、ボルトを全て外しても、内部でギアやシャフトが組まれているので「パカッ」とは開いてくれません。ここでプラスチックハンマー(通称:プラハン)の登場です。強く叩かず、そっとエンジンケースの無難そうなところ(クランクシャフトやフライホイルの周辺)を叩きます。少しずつ隙間が空いてくるので、最後まであせらずゆっくりとです。

   

ようやくパカッと割れたケース。

何度も整備本で見たあの光景が、
今まさに目の前に・・・

ちょっと感動ですね。

まずは四枚のギアを外していきます。ここにもスナップリングが使われているので、スナップリングフライヤーを使い、それを外します。この取外しで面倒なのはここだけで、あとはギアを抜いていくだけです。

ただし、ここでの注意はギアには表裏があるため、その向きを忘れないようにします。次にスターターギアを外しました。これは、キックレバーをはめた状態で、すこしキックを下ろすと、ぽろんと取れます。その奥にスプリングとワッシャーが入っていました。

   

上:ギアの構成部品
下:スターターギアと構成部品

左側から外した順番です。

このあと一時保管のために、ギアを重ね
ギアの向きを間違えないよう紐で縛りま
した。

保管している間に、ギア類が錆びないよう
灯油で湿らせた新聞紙に包んで、ビニール
袋に入れて、保管しました。

スターターギアを外すと、その奥にスナップリングがあるので、これを外します。次にスプリングギア(一次減速の大きい方)のシャフトをプラハンでクラッチケース側に叩けは、今回の目的のひとつであるスプリングギアの取外しができます。

ただし、これだけではドライブシャフトが邪魔して、スプリングギアをケースから抜き出すことができません。ここでは先にドライブシャフトを抜きます。(実は私はドライブシャフトを抜かずにスプリングギアを外そうとしたのですが、物理的に不可能でした・・・一時間格闘してネットで調べてようやく判明)

ドライブシャフトはベアリングを介してケースと固定されていますが、どうやらベアリングからシャフトを抜くよりは、ベアリングごとケースから外してしまう方が簡単なようなので、シャフトをケース内側からタイヤの付いている方向にプラハンで叩きました。ケースをコンロで暖める事もなく、意外とあっさり抜けました。

   

ベアリングごと抜けたドライブシャフト

ベアリングを外そうと、ギアプーラーを使って
いるところです。

ベアリングは交換する予定なので、
特にベア
リングへのダメージを気にすることなく、
引き抜きました。

バキッ!バキッ!と密着した金属がすれる時の
嫌な音を出しながら抜けました。
やはり相当きつかったようです。

ドライブシャフトが抜けたところで、ようやくスプリングギアが取り外せました。この取外しはケースの淵(合わせ面)に傷をつけないよう注意しました。

   

抜き取ったドライブシャフト

これを抜かないと一次減速の交換が
できないとは・・・

   

ようやく取り外せたところで・・・

新旧一次減速の記念撮影!

左がオリジナル。右が今回取付けるギア。
減速比3.7です。
小さいギアはクランク側のギアです。
次にクランクを取り外しますが、これは叩いただけでは抜けなかったので、他のサイトや整備本でお約束のガスコンロで炙って、ケースを温めたうえでプラハンで叩いて抜きました。(下の写真左)

尚、このクランクの反対側にオイルシールがあります。火で炙ったせいもあり波打って歪んでいましたが、これは交換予定ですので気にしません。

 

 
写真右は、せっかく抜けたクランクでしたが、ベアリングが付いてきてしまいました・・・このベアリングを外そうと、ギアプーラーを差し込もうと思いましたが、ベアリングとクランクの隙間が狭くて、ギアプーラーの爪が引っかかりません。

これを外すには、タガネで叩いて外すか、ベアリングプーラーという工具が必要になるんですが、タガネで叩くのはクランクにダメージが出る可能性があるので却下。ベアリングプーラーは所有していないので、今はそれを購入して取り外すか、このまま組んでしまうか思案中です。

ここからは、各ベアリングを交換予定なので、ベアリングを叩き出しました。これは基本的には、スナップリングを外してベアリングをたたき出すだけです。写真を撮ることも忘れ、一心不乱にばらしてしまいました・・・

   

今回はここまでばらしました。

ケース内は意外ときれいでした。

しかし、はじめて見たので通常どの程度
汚れてるかは知りません。


ここまでバラして思ったのですが、整備本の写真やパーツリストを見た限りでは、複雑で難しいと思っていました。しかし、開けてみると意外と単純なものでした。分解時間は構造を理解しながらだった事もあり、約2時間。

通常はここまでの段階で、ケース内部の洗浄をするのだと思いますが、今回ボアアップキットの取付けにあたり、ポート周りを加工する予定なので、加工が終ってから洗浄する予定です。

 

 

  


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