第二十九章 俊足ベスパ計画 その5 ベアリング取外し
無事クランク加工も終わり、ケース内洗浄を行う予定だったんですが、ケースからまだ外していないギアがありました。
それは「通称:クリスマスツリー」
この奥にもベアリングが納まっており、これを外さないとベアリングが交換できません。手でクリスマスツリーを回してみると、勢いよく回るんですが「シャーシャー」と音がします。音がするって事は、私が調べた限りではベアリングの油が切れているということ。
せっかくエンジンに使う5種類全てのベアリングを用意しているので、これも交換することにしました。このギアをはずすには、ギアの部分を手で持ってケースを叩いて抜きます。
|
クリスマスツリーを抜く様子。 |
なかなかきつくて抜けませんでしたが、かなりの力で何度か叩いていると抜けました。
しかし、ギアが抜けて目にしたものは!!
|
ガ〜〜ン!! |
まったくアンビリバボーな展開です。このベアリングはケースの溝にはまっているので、裏から叩いて抜くことができません。宇賀神商会の分解画像でも「たまにベアリングが残っているときがある。その時は焦る」とありましたが、まさか私にこのような不幸な出来事が訪れるとは・・・
もう一度ギアを差し込んで抜いてみようかとも思いましたが、恐らく無駄でしょう。万単位の工具を購入すれば外せるんですが、たった一個のベアリングを外すのに万単位の出費はちょっと・・・
冷静に考えてみて、あるひとつのアイデアが浮かびました。ベアリングの内輪にテンション(圧力)をめいいっぱいかけるものがあれば、ベアリングを押さえて抜くことはできないだろうか?
そこで私の仕事と関係する、ある金物が思い浮かびました。それは「アンカーボルト」
ネットで「アンカーボルト」「ベアリング」関連の記事を検索すると、なんと!全く同じ考え方で、すでに成功した方が居られました!!
これでベアリングの内径と合うアンカーボルトがあれば抜けると確信を持った私は、ベアリングの内径を計り(10mmでした)、さっそく近所のホームセンターでアンカーボルトとそれを引く抜くための金物を買ってきました。
|
ホームセンターで買った金物 |
ここからは順を追って説明していきます。 @ベアリングの内輪にアンカーボルトを差込む。
この際、ベアリングの内輪に付着して
いる油分をパーツクリーナーでしっかり
落としました。
次に少しでも抜けやすくなるよう願いを
込めてベアリングの外輪と、ケースの間に
CRCを吹き付けます。
内輪には掛らないよう注意。
浸透するまでしばし時間を置く(一服タイム)
Aロングナットにレンチを当て、回り止めを行い
ロングボルトの先端を締め込んでいく。
これで、アンカーボルトの先が広がって
いきます。これにより内輪にテンションが
掛かります。
なるべくベアリングに対して垂直になるよう
アンカーボルトを締め込んでいきます。
B引き抜く
別に叩いて引き抜いても構わないんですが、
ベアリングプーラーの部品を流用して、
支柱にしました。
ロングナットをレンチで固定して、プーラーの
上のナットをレンチで締めこんでいけば支柱が
つっかえ棒になっているので、自然とベアリング
が上がって(抜けて)きます。
ベアリングプーラーはクランクのベアリングを
外すのに購入したものです。
このあと説明があります。
C少しずつ抜けてきました!!
あまりに嬉しかったので、一枚。
最初にバキッ!と音を立てながら抜けて
きました。キテます!キテます!!
途中滑りを良くする為、ケースとベアリングの
外輪の隙間にCRCを吹きました。
|
D大成功!! |
|
E失敗作(左)成功作(右) |
|
|
|
しかし、そのままではまだ爪が厚くて、 |
|
薄く削ったおかげで、爪が隙間に納まり |
たった2個のベアリングを外すために、ここまで手間が掛ってしまいました。しかしアイデア次第で、高価な工具を買うこともなく、最低限の出費で作業できたので、私的には大満足です。
尚、クランクのベアリングを外す場合、今回使ったプーラーと違う種類のものがあります。これはベアリングを挟み込んで、狭い隙間をグイグイ広げていくものです。隙間が広がったら、ギアプーラーなどで抜き出します。
これはヤフオクで「ベアリングプーラー・スペーサー」と言う名前で出品されてます。明らかにこちらの工具のほうが効率的だったのですが、簡単に手に入らなかったので使いませんでした。
作業時間は二つ合わせて1時間程度。そのうち30分はプーラーの爪を削る作業です。ただし、アンカーボルトの買出しに20分、激安ベアリングプーラーの買出しに2時間でしたw
TOP | 当サイトの説明・注意 | ベスパ奮闘記 | 戯言 | PHOTO | BBS | Link | update