第三十二章 俊足ベスパ計画 その8 クランク挿入・ケース組立て



 

前章でケースのクラッチ側パーツの取り付けが終り、今回はフライ側のパーツを組み込み、ケースを閉じます

まずはクリスマスツリーの取付け。

   

クリスマスツリー取付けの図

ねじ山を潰さないよう、ナットを先端に
つけてプラハンで叩き込みます。

途中、ベアリングが垂直になっているか
確認しながら奥に届くまで打ち込み、
スムーズに回転するか確認しました。

続いて、クランクの取付けです。50Sの場合、フライホイル側のベアリングとクランクがきつくはまっている為、先にケースに取付けておくことにしました。

クランクを凍らせて入りやすくして、叩き込んでしまっても構わないのですが、叩くのに抵抗がある私は、叩かずにクランクを挿入する方法を考えました。調べてみるとクランクシャフトのフライホイル側のネジの径は10mm、ベアリングプーラーのネジ径も同じく10mm。

「お?・・・これは行けます!」   
 

   

クランク取付けの図。

このように、ベアリングプーラーと
10mmのロングナットを使って、締め
上げる事により、ケースに挿入して
いきました。

右下のプラハンは作業とは無関係です。

   

アップの写真

方法としては、30章でベアリングを
抜いた方法とほとんど同じです。

それにしてもベアリングプーラー
大活躍です!

この時点では、仮組みなので、ケースとクランクのクリアランス(隙間)が1ミリ程度になるまで、クランクを挿入しました。微調整はケースを閉じたあとで行います。

これで、ケース内に組み込むパーツの取付けは完了しました。いよいよケースを閉じるのですが、その前にパーツ各所にオイルを挿します。

   

フライホイル側ケース

○赤丸
…グリス
青丸…2サイクルエンジンオイル
黄丸…ミッションオイル

   

クラッチ側ケース

クランクのオールシールには数滴垂らして
シール全体に塗り広げました。

ケースの淵にはガスケットがつけて
あります。

ガスケットには液体ガスケットを塗りました。

オイルはあまり挿しすぎると、ケースを合わせるときにポタポタ垂れて、作業しづらいので適量がいいです。ケースの召し合わせ(ガスケットをつけた部分)にゴミがないかよく確認します。

さぁいよいよケースを閉じますが、そのままかぶせてもスコッとは収まりません。ギア同士が噛み合うよう、ドライバーなどでギアの歯車を合わせ、ケースを閉じます。同時にガスケットがずれていないか確認します。ケースは絶対に叩いてはいけません。優しく手で押すだけです。

ケースがほぼ閉まったところで、クランクが回るかコンロットを持って確認しました。回らなかったり、回っても引っ掛かりがある状態で無理に回すと、クランクにダメージを与えてしまう可能性があるので慎重に行います。

私の場合、クランクを1mmのクリアランスで仮組みしておいたので、ピタッと閉じた状態で、クランクも回り、引っかかりもありませんでした。

それを確認したうえで、パーツをなじませる意味で、ケースをプラハンで軽くコンコンと叩きました。

   

ケースを閉じた状態。

フライホイルサークル内の、5本のボルト
ナットを仮締めしました。

この時点では、まだクランクの調整は行って
いないので、本締めはクランク調整後です。

私はここでフライ側のオイルシールをはめて
しまいましたが、これはクランク調整が終って
から行ったほうがいいです。

ケースを仮組みしたところで、クランクのクリヤランスの調整を行います。整備書等をみると、フライホイル側クランクとケースの隙間のクリアランスはテレホンカード三枚分。一枚が約0.25mmなので三枚で0.75mmとありますが、個体差があるので私は一番スムーズにクランクが回るように調整しました。

尚、調整では叩くことはせず、クランクを仮組みした時と同じようにベアリングプーラーを使い微調整しました。これは、非常に微妙な調整なので、特に注意して行いました。

   

フライ側クランクのクリアランス。

ゲージを入れて隙間を測定してみました。

隙間はちょうど0.75mmでした。

   

クラッチ側クランクのクリアランス。

ゲージで測定すると、0.70mmでした。

   

クランクのロータリーバルブとインテーク部分
の隙間。

恐ろしく狭いです。ゲージで測定するのを
忘れましたが、0.1mm?もうすこし?

この狭い隙間がバルブ(栓)
の役割を果たしてます。
まぁちょっとは漏れますがw

でも、すごいですね〜。ちょっと感動しました。

   

測定に使ったゲージ。単位/mm

0.04・0.05・0.06・0.07・0.08
0.10・0.15・0.20・0.30の9サイズ

これを重ねて測定しました。

東急ハンズで430円。


クランクの微調整は、今回の俊足計画中最も慎重に作業した部分です。これをいい加減にやってしまうと、一発でクランクがダメになる可能性もあります。

私はバラすときにボケッとしてて、クリアランスを計測していませんでした。バラす前に測定しておけば、組むときの参考になるので、次回からは必ずクリアランスを測定してからクランク分割しようと思いました。次回があるとは思えませんが・・・

作業時間は、約1.5時間。スリリングな作業で疲れました。

 

 

  


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