第三十四章 俊足ベスパ計画 その10 クラッチ交換・取付け



 

何度もやり慣れたクラッチ取付けです。古いクラッチ板を新品と交換し、強化スプリングを組み込みます。元から付いていたクラッチは長期間放置されていたようで、見事に張り付いていました。

    

分解したクラッチ(スプリングを除く)

クラッチ板とスチール版が張り付いて
いたため、コルクの跡がスチール板に
付いています。

まずはスチール板のコルク跡を取り除き、スチール板のコルクの当たる面を300番台のサンドペーパーを当てて、荒らしました。ペーパーの粗さは資料がなく不明なので適当な番手ですが、これをすることで、クラッチの食い付きが良くなり滑りを防げるはずです。

次にスチール板の内側にある爪を、インナーケース(上の写真の右下のパーツ)に引っかかることなく収まる様、クラッチ板と当たる面をヤスリで削りました。インナーケースにバリが出ていたので、それも削りました。

最後に
ベスパクラッチでお約束のコルクの溝を彫りました。カッターで溝を入れて、マイナスドライバーなどで地金が見えるまで削り取ります。

   

クラッチ下準備完了。

溝の部分のコルクを取り除いてあります。

この後、一晩ミッションオイルに
浸しておきました。

翌日、クラッチを組んで取付けです。今回のクラッチ構成は3枚ノーマルクラッチ板とマロッシの強化スプリングの組み合わせで行う事にしました。マロッシのスプリングは人によって「すごく硬い」「硬い」「そんなに硬くない」と様々で、取付ける時は相当悩みました。

しかし、今までの75cc+ピナスコギアのエンジン仕様に、3枚ノーマルクラッチ+メーカー不明の強化スプリングの組み合わせで走行1,500km、ズルズルに滑っていました。その事もあり「硬い」とされる、マロッシのスプリングを入れてみました。またポリーニ製の強化スプリングもありますが、これは某ショップの人によるとマロッシよりも硬いそうです。

   

組み立てたクラッチ

爪がきれいに揃い、間に挟むスチール板も
きれいに揃っているか確認しました。

クラッチバスケットには、スピルを入れます。これは付いていたスピルが歪んでいた為、スペアで持っていたものを取付けました。

   

スピルを収めた図

ベスパのエンジンの場合、スピルは三ヶ所に
使われています。非常に重要なパーツですので
分解時の紛失に注意です。

また取付け取外しの際、誤って落とすと
とんでもない所に入り込み、エンジンを
ばらして取り除く羽目になる事もあるので
気をつけましょう。

スピルの収まりをしっかり確認し、クラッチが収まったら、ナットを締めます。締め込みは前章の一次減速の締め込みと同様に、ギアの間にドライバ+ウエスを挟み、周り止めを行ってトルクレンチで締め込みました。

   

クラッチ取付け完了

クラッチナットの締め付けトルクは
4.5(kgf・m)で締めました。

あとはクラッチケースのカバーを
付けて終了です。

クラッチケースカバーの6本のボルトは
閉めこみすぎると舐めるので注意です。
締め付けの規定トルクは0.6〜0.8(kgf・m)
とあります。

尚、クラッチ交換には二つの専用工具が必要です。これについては第十四章に詳しく記載してあるので、そちらを参照してください。

作業時間は約1.5時間+一晩。1.5時間のうちのほとんどがスチール板に固着したコルク跡の取り除きと、コルクの溝彫りです。次章でいよいよエンジン載せ替えです。

 

 

  


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