第五十五章  TMパワーを手に入れる その2 取付け編



 

前章でオーバーホール、パーツの確認をしたところで車体に取り付けます。

社外キャブレターを取付ける際、私にとっての難関はワイヤー取付けです。デロルトキャブレターであればキャブレターの外側のフックにワイヤーを引っ掛けるだけなので"ポン付け"可能なんですが、国産キャブの多くはキャブレター内部でワイヤーを引っ掛ける構造になっています。

   

写真ではわかり辛いですがワイヤーを
キャブレターの蓋に通し、スロットル
バルブに引っ掛ける仕組みになって
います。

左の黒いものがスロットルバルブ。

上の爪楊枝状のものがジェットニードル。
ここで重要なのはワイヤーの長さと遊び。これがうまくいかないとアクセルレスポンスが悪くなりアクセルを全開にしてもキャブレターが全開にならない。等の不具合が出てきます。

アクセルのインナーワイヤーの長さを調整すればアクセル開度とキャブレター開度の関係はうまくいくと思われますが、インナーワイヤーを取外し調整するのが面倒なので、現在付いているワイヤーを使って取り付けることにします。

そこでまずは現状の把握です。現在付いているアクセルの開度0%・100%の時のワイヤーの長さと、そのストロークを調べます。写真を撮ってないのでCADで書きました(笑

   

開度0%:56o
開度100%:32o

よってストロークは24o
ここでひと安心です。なぜならストロークが24o以下だった場合、TM24のキャブ径はその名の通り24oですから、アクセルを全開にしてもキャブレターが全開にならないということです。これだったらハイスロットルにする必要はなさそうです。

続いてTM24にアクセルワイヤーを付けた時のワイヤー長さを調べます。

   

開度0%:47o
開度100%:22o

よってストロークは25o
ストロークが1o違いますがこれは問題ない範囲ということにしてしまいます!

そして開度0の時の差が56o−47o=9oあります。要は現状のアクセルワイヤーで取り付けるためには、ワイヤーのアウターに9oの筒状のものを挟めばよいということです。

不要パーツを物色するとプラグのアルミキャップが穴も開いていて丁度良い大きさです。これを少し加工して挟んでみました。

   

こんな感じで挟みます。

黄丸がプラグのアルミキャップ。
ここでキャブレターに取付けアクセルワイヤーを繋いでみます。アクセル開度0%・100%の状態で、しっかりキャブレターのスロットルバルブも全閉・全開になりました。計算通りです。

しかし新たな問題が・・・。それはアクセルワイヤーはボディーの下のほうから伸びていて、キャブレターのところで180度Uターンしてきます。ところがただプラグのアルミキャップを挟んでいるだけなので、Uターンする時にワイヤーのアウターが歪んでしまいます。

   

グニャっと曲がった時に矢印の
部分に隙間ができます。

これはよろしくありません・・・

こんな状態で取り付けるくらいだったら、アクセルワイヤーを9o切断するほうがよっぽど手っ取り早いです。それともうひとつの心配は、これだとワイヤーの遊びの調整はハンドル内部のタイコで調整を行うしかなく面倒です。

デロルトのキャブレターを見ればわかりますが、必ずワイヤーの遊びが調整できるよう「アジャスター」が付いています。この機構をなんとかTM24にも取り入れられないかと考えました。

   

デロルトのキャブです。(19Φ)

矢印のところがアクセルワイヤーの
遊びを調整するアジャスター。

このパーツを使って、TM24のキャブレターの蓋を加工すればアジャスターとして機能しそうです。尚、実際に利用したのはデロルト16Φに付いていたアジャスターです。微妙に形が違いました。

   

こんな感じで組み合わせます。

そのままでは取り付けられないので
キャブの蓋の穴をドリルで広げ、
タップでネジの溝を切ります。

後には戻れない加工に手をつけてしまいました。ドキドキもんです。そして完成したのがこちら。

    

"アジャスター付きキャブの蓋"
(そのまんまやん!!)

画像にカーソルを合わせると、
アジャスターを締め込んだ状態が
見られます。

アジャスターの調整範囲は約5o。

   

ワイヤーを通してみました。

アジャスターが"さや状"になって
いるのでワイヤーを180度曲げても
うまく納まっています。

さっそくこれを車体に取り付け、アクセルが問題なく動くか、スロットルバルブが全開になるかをチェックします。

   

このように車体に取り付け、
鏡を使ってスロットルバルブの
開閉ををチェックしました。

画面奥が鏡。

結果は大成功です!!自作パーツのため耐久性は分かりませんが、とりあえずは問題なさそうです。自分が考えた仕組みがシンプル且つ機能的にできたので大満足です。

今回の加工ではアクセルワイヤーがキャブレターのスロットルバルブに直結されているため、キャブレターを車体から取り外す際、キャブレターの蓋を取り外さないといけないという手間のかかる仕組みになってしまっています。しかしワイヤーを繋いだままでもジェット類の交換はできるため、今回は直結にしました。

キャブレターとワイヤーを直結せずに繋ぐのに一番お手軽なのは「スロットルホルダー」といって、キャブ側・アクセル側のワイヤーを途中で繋ぐパーツを使うことです。ただしこれは途中にパーツを挟むことでアクセルワークが悪くなる可能性がある。簡単に手に入らなかった。という理由で今回は使用しませんでした。

これでやっと走行できるようになりました。次章「セッティング編」で使い心地・その他はお伝えしたいと思います。

尚、今回インテークマニホールドをエンジンへ取り付ける工程は、他章でお伝えしているので紹介しませんでした。それから"インシュレーター"ですが、TM24専用品ということもあり全く問題なく取り付けられました。走行中に振動でキャブレターが外れてしまう事はないと思います。


 

  


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