特別章  クラッチ板の交換



 

先日、こんなメールをいただきました。

こんにちは.あなたの vespa story(vespa日記)いつもよく見ています.

ここは韓国で, 私は韓国のvespa50sオーナーです. こんなにあいさつするようになって嬉しいです.

中略

韓国はこのごろ絶頂の人気を見せてくれていますが. あなたの50s話は本当におもしろいです. 私もこのごろメンテナンスに熱をあげています. 本当にvespaの魅力と言う(のは)すごいです. ^^

私もノーマルの50を今度85ccでbore-upしました. 満足だが, クラッチが問題を起こしました.

もちろん韓国にもvespa shopがあるがその数価極めて少なくて(2ケ所)私が住む所にはないから修理がいつも頭痛いです.

クラッチは少し複雑ですね.強化クラッチを日本のsellerに注文しておいた状態ですが. 本格的な修理は気難しそうであなたに自問を求めたいです. 少しさえ手伝ってくれればありがたいです.

あなたのクラッチ交換でおこることは写真がまだ初心者である私には少し難しいです. クラッチ交換の時の注意事項位も知りたいです.

そしてクラッチ交換に使われる専用工具を製作することもできると言うのに(まだ一緒に注文することができなかったです.)ボルトの大きさ(何mmなのか), ナットの大きさを教えてくれてほしい度作って使って見ます.

一応今日はここまでにします.ご返事お待ちします. たまにメール位やりとりしながら話したいです.

よろしくお願いします.
 

こんなメールをいただいて、お返事しないわけにはいきません。ここは微力ながら日韓友好のためにも、詳しくお伝えしたいと思います。

まずクラッチをボディーから取外すまでの工程は、他章(第25章)を参考にしてください。 

では、クラッチを取外した状態から詳しくお伝えします。

  

左が取外した状態のクラッチ。

右がスプリング外しです。

  

スプリング外しは写真の
ように3つの部品で構成
されています。

では、分解に取り掛かります。

  

@Aのボルト状の部品を
クラッチの裏側に挿入。

  

ABのワッシャー状の部品を
表側に挿入。

  

BCのナットをはめます。

  

C裏側の部分をプライヤーなどで
固定して、表側のナットをいっぱい
まで締めこんでいきます。

これによりスプリングを押さえつけ
クラッチ板を取外せるようになります。

  

Dクラッチ板が外れないように
取り付けられている「Cクリップ」
を外します。

これは先の細いペンチなどを使って
爪から外していきます。

固い金属でできていますが、あまり
無理に力をかけると変形したり、折
れる事もあるので注意です。

  

ECクリップが取外せました。

この時に歪んでいないか確認します。

歪んでいるようなら、ペンチなどで
歪みを直しますが、ここで勢いよく
直すと、破損する恐れがあるので慎重
に行います。

  

FCクリップが外れれば、あとは
パーツを続々と外していきます。

これは一番上の蓋がはずれたところ。

  

Gクラッチ板を押えるプレートが
外れます。

これは裏表があります。
面が取ってあるほうが「表」。

これが固くて手で外せない場合も
あります。その時は軽く叩くか
ペンチ等を使って外します。

  

Hクラッチ板まで外した状態です。

後ろに外していったパーツが右から
順に並んでいます。

クラッチ板だけの交換なら、これ以上
分解する必要はありません。

  

I強化スプリングなど、スプリングの
交換をする場合は、先程締め込んだ
スプリング外しを緩めます。

  

J全ての部品が分解できました。

  

Kクラッチの構成部品です。

実はこれは50Sのものでなく、
50HPの部品も使っています。

形が多少違いますが、構成して
いる部品や手順は全て同じです。
これで分解は完了。後は逆の手順で組みつけていけば終わりですが、注意事項等も含め、いくつか工程を紹介します。

クラッチ板のコルクはしっかり溝を削り、新品の場合は一晩ミッションオイルに漬け込んで、オイルをなじませておきます。

  

重ねる順序は、コルク板の間に
スチール板を交互に挟んでいき
ます。

この際、コルクの溝がなるべく
揃うようにコルク板を重ねてい
きます。

  

コルク板を重ねたら、横から見て
コルク板の溝が、できるだけ一直線
に揃っているか確認します。

  

スプリングをはめる時は、爪と
溝がきれいにはまるように、微調整
しながら、スプリング外しを締め
こんでいきます。

ここで無理に締めこむと、爪や溝が
破損する恐れがあります。
クラッチ板を組み込む際、きつくて納まらない場合は、それぞれのパーツが歪んでいる可能性があります。その場合は、しっかりはまる位置を探してみます。それから、爪や溝にバリが出ているようなら、ヤスリを使って削るといいです。バリを取ると大概はすんなり納まるようになります。

  

順にはめ込んで行き、最後の
工程です。

Cクリップをはめますが、写真
のように一ヶ所ずつ、順に爪に
はめていくと、割と簡単にはめて
行く事ができます。
Cクリップがしっかり爪に納まっていないと、走行中外れる恐れがあるので、よく確認します。それからCクリップの端部が、しっかり爪の中央に納まっているか確認します。

 
 悪い状態。
 
 良い状態。 

  

あとは外側のクラッチ板の爪を
きれいに揃えて、スプリング外しを
取外せば、作業完了。

写真はスパナを使って爪を揃えて
いるところ。


続いて、スプリング外しを購入しなかった場合の自作工具の紹介です。

この工具自体、難しい構造のものではないので、材料さえ見つかれば簡単に自作できます。 

 
 市販工具。
 
 自作工具。 
のボルトは8o〜10mm径のロングボルト、長さは10cm程度のもの。のナットはボルトと同径のロングナットです。ここで申し訳ないのですが、の丸いワッシャーは用意していません。ホームセンター(ボルト売場)などで探してみてください。

  

ワッシャーの大きさの参考です。

外径30o以上39o以下。この大きさで
ないと使えません。

内径はボルトが通せる大きさのもの。

あまり薄いものだと、閉めこんだ時に
歪むかもしれないので、二枚重ねても
いいと思います。

 

分解する時はその部品がどのように組み合わせてあるか(表裏や方向)を、しっかり確認しながら分解することが大切です。それと同時に、部品の歪みがないかを確認し、歪んでいるようなら修正してから組上げると、失敗は少ないと思います。作業時間は30分くらいだと思います。


 

 

  


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